配偶者に不貞行為があったときには、離婚請求ができる以外に、配偶者及び不貞相手に対して、慰謝料を請求することも可能です。
慰謝料を請求した際、不倫した配偶者やその不倫相手がその事実を認めないときがあります。この場合、慰謝料を請求する側が2人に不貞行為があったことを証明する必要があります。
不貞行為を証明するためには客観的な証拠が必要であり、それがなければこちらの慰謝料請求を裁判所は認めません。
ここでは、裁判または示談で通用する不貞行為の証拠を解説。この記事を読めば、決定的な証拠がわかるのはもちろん、それ以外の証拠でも慰謝料を受け取れる可能性が高まります。
不貞行為の証拠の集め方を、簡単なものから難しいものまで解説しています。
なお、現時点でまったく証拠を得られていない方は「【夫の不倫の証拠がない…】全く掴めない方の証拠の掴み方を徹底解説」も合わせてご覧ください。
不貞行為の証拠が必要になる場面
不貞行為の証拠が必要になるのは、主に次の2つの場面においてです。
個別に内容を取り上げます。
不倫を理由に裁判で離婚請求する場合
配偶者の不倫を理由に、裁判で離婚請求する場合は次のことが必要になります。
離婚を請求する側の配偶者（不倫をされた側）が、不貞行為の証拠を提出し、配偶者と不倫相手の性交渉の事実を立証すること。
不貞行為の証拠がない、不十分な場合は、裁判所に配偶者の不倫は不確かだと判断され、請求は棄却されて離婚は認められません。
協議離婚などの段階でも、不貞行為の証拠があれば、慰謝料や財産分与などの離婚条件の交渉を有利に進めることが可能です。
※ 不貞行為の詳細は「どこから不倫なのかを法律的な観点で解説【不貞行為の定義】」で取り上げています。
配偶者や不倫相手に慰謝料請求する場合
配偶者に不倫をされた他方の配偶者は、不倫をした配偶者に慰謝料を請求できます。要件を満たせば、不倫をした配偶者の不倫相手にも慰謝料の請求が可能です。
※ 不倫相手に対して慰謝料請求できる要件の詳細は「不倫相手に慰謝料請求するには？【故意過失など請求要件5つを解説】」で取り上げています。
※ 不倫相手に対する慰謝料請求の方法の詳細は「不倫相手に対する慰謝料請求の方法【直接会って請求する方法も解説】」で取り上げています。
裁判で不倫した配偶者やその不倫相手に慰謝料を請求する場合も、離婚請求と同様に、請求側に不貞事実の立証が求められます。
不貞行為の証拠が不十分な場合、裁判所に想像や予断が多いと捉えられ、請求は認められません。加えて、確たる不貞行為の証拠を持たずに、相手を追及してもウソを貫き通されます。
慰謝料請求を認めてもらうには、証拠はできる限り用意するのがポイントとなります。
問題の早期解決のためにも
不貞行為の証拠をできる限り用意する必要があるのは、裁判の場合に限った話ではありません。
不倫の慰謝料を請求する場合、通常は示談交渉から始めます。
示談交渉の段階であっても、証拠が多いほど高い確率で解決が望めるでしょう。証拠が固められていれば、相手は言い逃れが無理だと諦め、観念するからです。
裁判での決着は、どうしても時間が掛るため、精神的・金銭的にも負担が大きくなります。多くの証拠を用意するのは、示談交渉での解決が望めることに繋がります。
不貞行為の決定的な証拠は3つ
どのようなものが不貞行為の証拠になるのかをお伝えします。
最初に裁判の場でも、不倫があったと認めてもらえる可能性が高い証拠を解説。主には次の3つの証拠です。
個別に内容を取り上げます。
性交渉中の写真や動画
不貞行為の証拠として、裁判でも高確率で通用する【決定的な証拠】は、まさに二人が性交渉中の写真や動画です。
画像や映像に映っている人物が配偶者や不倫相手だと特定できれば、それのみで不貞行為を立証できます。
性交渉中の写真などを取得するには、不貞行為の現場を押さえる必要があるため、そんなの無理だと思う方がほとんどでしょう。
確かに、2人が性交渉中の現場に乗り込み、その場を撮影する方法で手にいれるのは不可能に近いです。しかし、次のような場合や方法なら取得できる可能性はあります。
配偶者のスマホをチェックしたら、配偶者と不倫相手との性交渉中を撮った動画や画像を発見した。
探偵業者に不倫調査を依頼した結果、自家用車で性交渉をしている映像が撮れた。
自分がいないときに、不倫相手を家に上げている気配がしため、隠しカメラを忍ばせたところ、性交渉している映像が撮れた。
このような方法にて、不貞行為の決定的な証拠を得る方がいます。
特に、スマホに性交渉などの画像や動画を残す人が近年は増加。配偶者のスマホをできるなら今すぐ確認を
2人がラブホテルに出入りする写真や動画
配偶者と不倫相手が二人でラブホテルに出入りするときの様子を撮った写真も、不貞行為を裏付けする強い証拠です。ラブホテルを利用する目的は「男女が性交渉をする目的」であることが一般的だからです。
「男女がラブホテルに入った」という実態から、そこで性交渉があったと合理的に推測されます。
証拠を残す際のポイント
ラブホテルの利用を客観的に証明する方法は、ラブホテルに出入りする瞬間を写真などで撮ることです。
写真や動画を撮る際は、必ず「男女二人が一緒」に出入りする写真を撮りましょう。1人でラブホテルに入る写真などを撮っても、不貞行為があったとは認められません。
※ ラブホテル不倫に関する詳細は「ラブホテルで不倫をした夫と不倫相手に慰謝料請求する【必要な証拠】」で取り上げています。
探偵選びは慎重に
2人がラブホテルに出入りしている写真を、個人で押さえるのは困難でしょう。配偶者にばれずに尾行し、不倫相手とラブホテルに入る瞬間を撮影することは、よほどの時間や体力、技術がないと無理だからです。
※ 個人で尾行を成功させる難しさは「【不倫調査】自分で尾行してバレずに証拠を得る！その方法を徹底解説」で取り上げています。
ラブホテルに出入りする証拠を入手したいのなら、探偵を利用するのが現実的です。
ただし探偵は不透明な業界です。探偵選びを間違えると多額の費用だけが発生し、何の証拠も得られないといった最悪な事態となります。よって、探偵選びは慎重に行うことが必要です。
※ 探偵選びなどのポイントの詳細は「【探偵業者の正しい調べ方】不倫調査の依頼先を決める8大ポイント」で取り上げています。
※ 不倫調査における探偵料金の詳細は「探偵の不倫調査はいくらの費用がかかる？【料金を抑えるポイント】」で取り上げています。
ビジネスホテルの出入り写真では弱い
ラブホテル以外の宿泊施設であるビジネスホテルや旅館などに二人が出入りしている写真を撮っても有力な証拠にはなりません。
これらの宿泊施設は性交渉を目的とする場所でなく、仕事でも利用することも多い場所だからです。「仕事の打ち合わせをしていた」などの言い逃れが簡単にできます。
ただし、次のような場面の写真などを一緒に撮れれば、証拠能力は高まります。
宿泊施設に入る前に、二人が手を繋いでいる姿や、キスやハグをしている姿の写真など…。
例のような写真も合わせれば、仕事云々の言いわけはできないため有力な証拠となるでしょう。
不倫相手が不貞行為の事実を認めた書面
不倫相手が不貞行為の事実を認めた書面でも、内容を具体的に書くことによって、立派な証拠となります。
具体的とは、次のような内容をはっきり書くことです。
- どこの誰と性交渉をした
- 性交渉の期間・回数
- どこで性交渉をしたか
- 既婚者だとわかって性交渉を持ったこと
これらの内容をはっきり書き、最後に日付と不倫相手の住所や氏名を署名し、押印すれば裁判でも通じる立派な証拠です。
不倫事実を認める書面を素直に書くのであれば、示談の段階で問題解決する可能性が高いでしょう
補助的な不貞行為の証拠でも立証は可能
ここからお伝えする証拠は、それ単体だけでは裁判で不貞行為があったと認めてもらうには難しいものです。しかし、その他の証拠を組み合わせることで、認めてもらえる可能性があります。
裁判以外の方法で慰謝料を請求する場合においても、補助的な証拠を組み合わせるのは効果的な方法です。
主な補助的な証拠の例は次通りです。
不倫関係がうかがえるLINEなどのやりとり
配偶者の不倫が発覚するきっかけとして多いのは、次のような内容のLINEやメールなどを発見したときでしょう。
「愛している」
「大好きだよ」
「今度いつ会える」
このような内容のLINEなどは、相手への好意はわかります。しかし不貞行為があったどうか不明なため、これだけでは証拠としては弱いです。
それでは、次のような内容のLINEなどはどうでしょうか？
「君とのSEXの相性はバッチリだね」
「避妊しなかったけど大丈夫かな？」
性交渉があったとわかる内容であっても、これだけでは不貞行為があったとは認められません。
「単なる遊びで、こんな悪ふざけしたLINEをした」と言い逃れができるからです。
信じられないかもしれませんが、このメッセージのやりとりだけでは、裁判所は不貞行為があったとは認めません。
以上のように、普通にみれば不貞関係があるとわかるメッセージのやりとりでも、それのみでは決定的な証拠にはなりません。だからといって意味がないわけでありません。
不倫が伺えるLINEのやりとりに加えて、他の証拠を組み合わせれば証拠能力は高まります。詳細は後ほど。
不倫関係がうかがえる内容のLINEなどのやりとりは、補助的な証拠とはいえ、比較的手に入りやすい証拠です。見つけたときは、やりとりを写真に撮るなどして必ず証拠保全をしましょう。
配偶者が不貞事実を認めた念書
配偶者から不貞事実を認める念書を書かせ、それを基に不倫相手に内容証明郵便などで慰謝料請求する。このやり方はオーソドックスな慰謝料請求の方法です。
不倫相手に、不倫事実を認める念書を書かせようとしても、次のような言い逃れをして拒否されることが多いです。
「体の関係はありません。」
「既婚者なんて聞かされなかった」
「ご主人が無理やり誘った」
反面、不倫をした配偶者は素直に応じる場合が大半です。離婚を覚悟で不倫をする配偶者は少なく、理性を抑えられずに欲望で不倫に走る者が多いからです。
離婚をしたくない配偶者は、他方の配偶者から「許してほしければ書いて」などと言われれば拒否できません。
配偶者が不倫を認めた念書は強い証拠となります。不倫相手がどれだけ責任を認めなくても、最終的には認めざるを得ない状態に追い込まれることが多いからです。
裁判になったときの補助的証拠としてはもちろん。裁判外で慰謝料を請求する際には強力な武器となるため、必ず手に入れたい不貞行為の証拠です。
不倫を認める念書に載せる項目
不倫の念書を書かせる際は、次の項目を押さえることで証拠能力が高まります。
- 不貞開始の時期
- 不貞行為の期間
- 不貞行為の回数
- 不倫相手の名前や住所、職業
- 不貞相手方と出会ったきっかけ
- 不倫相手が既婚者だと知って性交渉したこと
不倫を認める念書と同じく、内容をレコーダーでも録音しておくといいでしょう。
※ 配偶者が不貞事実を認めた際に書かす書面の詳細は「夫や妻に不倫を白状させる方法と【不倫念書】を書かすべき理由を解説」で取り上げています。
電話の通話記録
携帯電話の契約者本人であれば、過去の通話履歴を携帯会社各キャリアから取り寄せることが可能です。
通話記録は不倫相手と電話のやり取りをしたか？ してないか？ の証拠にはなります。補助的な証拠となるため、それ単体では不貞行為を証明できるではありません。
有効的な活用法としては、嘘をついているか否か、の判断するために利用するのです。
不倫相手などに「お互い3～4回ほど電話しただけ」などと言わせ、その後に通話記録を突きつける。ボロをだした当事者は観念する可能性があります。
裁判で争っている状況なら、嘘をついた側に対する裁判官の心証は悪くなり、不貞行為があったと認める可能性が高まります。
その他の不貞行為の証拠
不倫をした配偶者の上着やカバン、財布などあらゆるところチェックしてみましょう。次のようのものが見つかる可能性があります。
- ラブホテルなど宿泊施設の領収書
- ふたりで食事をした飲食店のレシート
- 不倫相手に関するメモや日記
- 不倫相手からの手紙やプレゼント
- ふたりで撮ったプリクラ
- 自家用車のカーナビ記録
「こんな些細なものでも必要」と思うかもしれませんが、小さな証拠を積み重ねることで、不貞行為の立証は大いに可能です。詳しくはこの後にお伝えします。
他にも、可能なら配偶者のクレジットカードの明細をチェックしてみましょう。ラブホテルなどに宿泊している事実を証明できることもあります。
こちらから証拠を取りにいく
こちらからの仕掛ける必要がありますが、配偶者が使う自家用車にGPSを取りつけると配偶者の行動がわかります。
結果、ラブホテルにいたことを示すGPS記録が得られる可能性もあります。
※ 不倫の証拠とGPSに関する詳細は「【不倫調査】GPS設置はプライバシー侵害で違法？証拠能力はある？」で取り上げています。
GPSに比べて、バレやすい可能性が高まりますが、ICレコーダーを自家用車に忍ばせると車内の音を拾います。結果、不倫相手との会話を記録できる可能性があります。
基本的にGPS、ICレコーダーの記録も決定的な証拠にならないのは同様です。しかし、その証拠を配偶者に突き付けて不倫を自白させることもできます。
不貞行為の補助的証拠を集める目的と具体例
不貞行為を認めさせるためには、ラブホテルに出入りする写真を入手できればいいのですが、お伝えした通り簡単にはできません。
個人でそれを得るには、時間的にも技術的にも困難ですし、探偵に頼めば入手できる可能性は高いですが費用も多額です。
一方、不貞行為の補助的な証拠を集めるのなら、探偵に依頼しなくても自分でも可能です。
それでは補助的な証拠を集めて、裁判官に不貞行為の事実を認めてもらうには、具体的にどうすればいいのでしょうか。具体例をだしてお伝えします。
補助的証拠を組み合わせる例
不倫相手から送信された次のような内容のLINEを発見したとします。
「昨日は一緒にお泊りできて嬉しかったよ。また近いうち会おうね」
お伝えした通り、このLINEだけでは不貞行為があったと認めてもらえません。
ところがこのLINEを発見した後、配偶者の上着のポケットからラブホテルの領収書が見つかった。その領収書の日付は、LINEの受信日時の前日のものであった。
この二つの補助的な証拠を組み合わせることで「この二人の間に性交渉があった」という推定が働きます。結果、裁判官に不貞行為があったことを認めてもらえる可能性が高くなります。
裁判外の慰謝料請求の場合も同様で、これら証拠を突きつけることで、配偶者などが不倫を認めざる得ない状況に追い込まれます。
たとえ些細な証拠であっても、それらを結集させると不倫があったと裏付けできる可能性は十分あります。
「これは関係なさそうだから要らないかな」と判断せずに、すべて残しておくのが鉄則です
まとめ
裁判または示談で通用する不貞行為の証拠を解説しました。
単体でも、裁判所で不貞行為があった認められる決定的な証拠は「性交渉している様子」や「二人がラブホテルに出入りするとき」の写真や動画です。しかし、この証拠を手に入れるのは難しいです。
配偶者の不倫を認める念書など、補助的証拠を可能な限り集めることが、不貞行為を認めさす上のポイントとなります。些細な証拠でも必ず取っておくようにしましょう。