どこから不倫なのかを法律的な観点で解説【不貞行為の定義】

どこから不倫なのかを法律的な観点で解説【不貞行為の定義】
  • 一般的な不倫の境界線はどこ?
  • 法律的に責任を問える不倫はどこから?
  • 不倫をされた場合の責任追及の方法とは?

配偶者が不倫していると思った行為が、必ずしも法律的な責任を追及できるとは限りません。

本記事では法的責任を追及できる不倫はどこからなのか?を解説。この記事を読めば、法律的な観点での不倫がわかるとともに、不倫をした当事者に対する責任追及の方法がわかります。

法律上のところをいう不倫は【不貞行為】があるか否です。不貞行為が何かも詳しく取り上げています。

どこから不倫? 一般的な線引き

不倫の線引き

最初に「どこからが不倫か?」について、一般の方が思う線引きをお伝えします。「ウレぴあ総研」のサイトの記事に、参考となるデータがありました。

当該サイトの読者から「浮気の境界線はどこから?」についてアンケートを取り、その結果が公表されていました。

「浮気」と「不倫」の定義は、同じ意味で捉える方は多いです。ですので、この調査結果を「不倫の境界線はどこから?」としても遜色はないでしょう。結果は以下の通りです。(引用:ウレぴあ総研「浮気の境界線はどこからら?」

男性における不倫の境界線
女性における不倫の境界線

結果を見ると、男性からの不倫の線引きは「SEXをしたら」が1位。女性だと「好きという感情が芽生えたら」が1位でした。男女で基準の違いがはっきり出ていますね。

他には、手をつなげば不倫になる、キスで不倫になる…etc 同性でも人によって感じる不倫の線引きは実にバラバラです。

不貞行為の定義とは

不倫の定義を確認

不倫は法律用語では【不貞行為】と言います。「不倫」と「不貞行為」を同じ意味でとらえる方がなかにはいますが、必ず一致するわけではありません。

先ほどのアンケート結果の通り、何が不倫であるかは人の価値観や道徳観などにより違ってきます。しかし「不貞行為」の定義は、裁判所で次のようにしっかり定義されています。

配偶者ある者が配偶者以外の異性と自由な意思に基づいて性的関係を持つこと

これが不貞行為の定義ですが、これを見て「???」とか「何となくわかるけど…」と思う方もたくさんいるでしょう。よって言葉別に噛み砕いて説明します。


「配偶者ある者が、配偶者以外の異性」の意味

「配偶者ある者」とは、役場に婚姻届を提出し、戸籍に反映されている夫婦だけではありません。諸事情により、婚姻届は提出していないが、実質上において「夫婦同然」に生活している内縁関係も含まれます。

他には「婚約中の男女」も含みますが、単に婚約しているだけではなく足りません。結納を交わす、式場を予約しているなど、客観的に婚約していることは確かだという状況が必要です。

次に「配偶者以外の異性」とは、その言葉の通り、妻(夫)以外の女性(男性)という意味です。同性同士で肉体関係があった場合は、離婚原因にはなりますが、「不貞行為」自体にはあたりません。


「自由な意思に基づいて性的関係を持つこと」の意味

「自由な意思に基づいて」とは、自分から進んでという場合を指すのはもちろんです。

自分から動かなくても、ある女性から誘われたことがきっかけで、性交渉した場合も含まれます。なぜなら、その女性の誘いを断ることも当然できたのですから「自由意思」に当てはまります。

何らかの脅迫を受けたことにより性交渉をした。または夜道を歩いていると、急に押し倒されレイプされた場合などは、不貞行為にはなりません。ただし配偶者ある者が、配偶者以外の異性を脅迫して性交渉した場合や、レイプをした場合は不貞行為となります。

「性的関係を持つこと」とは、言葉の通り性交があることです。

配偶者以外の異性と「手をつないだ」「ハグをした」「キスをした」だけの場合は不貞行為とはなりません。

こんな場合でも不貞行為になるの?

こんな場合でも不貞行為になるのか?

これまで不貞行為の定義を詳しくお伝えしました。次に「このような場合は不貞行為になるの?」とよく疑問がでる次のケースを取り上げます。

個別に内容をお伝えします。


ペティングまで(挿入なし)

ペティングとは男女間の性的な愛撫や刺激をいいます。つまり、性交(性器への挿入、貫通行為)に至らない、一歩手前の行為です。

性器への挿入に至らないペティングは不貞行為にはなりませんが、かなりグレーゾーンであることには間違いありません。よって、精神的損害の賠償として慰謝料請求の対象になります。


酔った勢いで1度だけ性交渉

交際する気はないが酒に酔った勢いで、1度だけ異性と性交渉した。合コンや飲み会などで多いケースですが、これも不貞行為となります。

一度きりであろうとも、酒が入っていたとしても、性交渉を行えば、貞操義務に反するからです。


ラブホテルには行ったが性交渉はなし

異性とラブホテルに入ったが性交渉はしなかった場合も、絶対にないとは言い切れません。

例えば、酒を飲み過ぎて酔いつぶれてそのまま寝てしまった、体調が悪くなり休むために入った、などが考えられます。

この場合は確かに不貞行為はないですが、裁判で争った場合は不貞行為があったと判断される可能性が高いでしょう。

※ ラブホテルと離婚に関する詳細は「ラブホテルで不倫をした夫と不倫相手に慰謝料請求する【必要な証拠】」で取り上げています。


別居後に異性と性交渉

夫婦が別居中に配偶者以外の異性と性交渉するケースがあります。

不貞行為になるか否かは、別居の目的や夫婦の状況によりけりです。

夫婦仲が悪いからお互いの関係を見つめ直すなど、修復を目的として別居をしている場合は不貞行為となります。反対に、夫婦関係が既に破たんしている状態で別居しているのであれば、不貞行為にはなりません。


ソープランドでの性交渉

ソープランドなどの風俗店による性的サービスを受けた場合は不貞行為になるのでしょうか?

お伝えした通り、不貞行為とは「配偶者ある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を持つこと」です。よって、たとえ風俗店のサービスであっても、自由な意思で店に行って性的サービスを受けているため不貞行為となります。


風俗嬢に責任は一切なし

性的サービスを提供する風俗嬢は、基本的に不貞行為の責任を負いません。客に対してサービスを提供する義務があり、自由意思には基づいておらず、単に業務を遂行しているだけだからです。

あくまで不貞行為の責任を負うのは、ソープなどの風俗に行った配偶者となります。

不倫をされた場合の責任追及の方法

不倫をした者に対する責任追及の方法

法律上の不倫、つまり不貞行為をされた側の配偶者は、不倫配偶者やその不倫相手に責任をしっかり取ってほしいところ。法律上どのような責任追及できるのかを取り上げます。

責任追及の方法は、【法廷で不倫配偶者と強制離婚できる】と【慰謝料の請求ができる】の2つです。個別に詳細をお伝えします。


法廷で不倫配偶者と強制離婚できる

不貞行為の事実は離婚の成否に影響を及ぼします。どういうことか例を出して説明します。

夫の不倫が発覚。妻は自分を裏切った夫とは別れたいと思い、離婚を求めた。しかし夫は離婚を拒否し続けている。

しかし裁判の場、つまり法廷では、不倫配偶者がどれだけ離婚を拒絶したとしても、離婚を強制的に成立させることが可能です。不貞行為は、法律で定められた離婚原因に当てはまるからです。(民法770条1項1号

法定上の離婚原因に当てはまると、離婚請求を認める「勝訴判決」が認められ易くなります。結果、強制的に離婚を成立させることが可能です


1度だけの不貞行為は離婚が認められにくい

お伝えした通り、たった1度だけ配偶者以外の異性と性交渉をしても、不貞行為に該当します。

しかし1度だけの不貞行為は、法定上の離婚原因にならない可能性が高いでしょう。人間はときには過ちを犯すことを法律がある程度認めているからです。

1度だけ不倫をした配偶者が素直に過ちを認め、反省している場合は、裁判所は離婚判決をだしません。


不倫をした配偶者に慰謝料が請求できる

不倫をされた側の配偶者は、不倫をした配偶者に対し慰謝料を請求できます。

自身の配偶者が不倫をしている事実を知った、もう一方の配偶者は、多大なる精神的苦痛を受けます。それを慰謝させるために、慰謝料を請求できるのです。

不倫が原因で離婚する場合の慰謝料の大まかな目安は200万円です。

実際に請求額はこちらが自由に決められますが、その額が相場にかけ離れた金額であれば、相手は支払いに応じません。よって、相場を考慮した上で慰謝料額を決めましょう。

※ 不倫慰謝料の相場の詳細については「不倫慰謝料とは|目安はどれくらい? 【離婚しない場合も含め解説】」で取り上げています。

不倫相手にも慰謝料請求できる場合も

当然ながら不倫は一人ではできず、相手が必ずいるものです。この後に取り上げる要件に該当しなければ、不倫配偶者のみならず、不倫相手に対しても慰謝料請求ができます。

この場合、不倫配偶者と不倫相手の2人は連帯して、被害者の配偶者に対し、慰謝料を支払う責任を負います。詳細は「不倫(不貞)慰謝料の求償権を解説【負担割合は? ポイントは放棄】」をご確認ください。


慰謝料を請求できない場合もある

配偶者に不貞行為の事実があったとしても、慰謝料を請求できない場合もあります。代表的なのは【婚姻関係が既に破綻している場合】と【不倫相手がこちらの配偶者を既婚者だと知らなかった場合】です。


婚姻関係が既に破たんしている場合

配偶者の不貞行為が始まった時点で、既に婚姻関係が破たんしている場合は、判例上、法的に保護すべき利益がないとされています。不倫配偶者、不倫相手ともに慰謝料を請求できません。

婚姻関係が破綻しているとは、客観的に夫婦生活が破綻しており、もはや修復の見込みがない状態です。単に夫婦仲が悪いとか家庭内別居くらいでは、夫婦関係が破綻しているとは言えません。

法的に保護する利益がないとされるのは、既に婚姻関係が破綻状態ならば、配偶者に不倫をされても精神的苦痛を受けないからです


不倫相手がこちらの配偶者を既婚者だと知らなかった

配偶者が独身かのように偽り、不倫相手と性交渉をした。この場合、不倫をされた側の配偶者は、不倫した配偶者には慰謝料を請求できますが、不倫相手に原則できません。

独身者だと完ぺきに偽ったのなら、不倫相手は相手が既婚者だと知る由もないので責任を問えないからです。

もし相手が、既婚者だと知らないことに落ち度(過失)がある場合は、慰謝料を請求できます。詳しくは不倫相手に慰謝料請求するには?【故意過失など請求要件5つを解説】」で取り上げています。

まとめ

どこから不倫なのか法律的な観点で解説のまとめ

「法律上の不倫はどこからか?」をテーマにして取り上げました。この記事が不倫に関する疑問の解決に繋がったのなら幸いです。

もし自身の配偶者が不貞行為をしていたなら、配偶者やその不倫相手に責任を取らせることができます。しっかりと追及しましょう。

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