男女トラブルや離婚を専門に扱う某法務事務所に勤める1児のシングルマザーが、不倫の慰謝料請求に関する役立つ知識を発信します。
夫が、数年前に会社の同僚と不倫をしていたことが発覚した。
または、随分前から妻が不倫している事は分かっていたが、証拠がなかった為に追及できなかったが、今回決定的な証拠を得た。
そこで、不倫の慰謝料を不倫した夫(妻)や、不倫相手に請求したいと考えている。
しかし、これらのケースの様に不倫事実が随分前である場合、注意しなければならないのは「時効」です。
場合によっては、時効で不倫慰謝料を請求できないこともあります。
ということで、今回は不倫慰謝料の時効について取り上げていきます。
配偶者の不倫を随分前から知っていたという方は、ぜひご確認ください。
最初に不倫の慰謝料とは何かを簡単にお伝えします。
慰謝料とは、加害者が不法行為により負わせた精神的苦痛を、慰謝させる為に、被害者に対して金銭を支払うことです。
不倫はこの不法行為に該当します。
不倫をされた側の配偶者は、不倫した配偶者に慰謝料請求を出来るのはもちろん。
要件が揃えば、不倫相手に対しても慰謝料を請求することが可能です。
この場合、不倫配偶者と不倫相手の二人で不法行為を行ったことになり、二人は連帯して責任を負います。
※不倫の慰謝料の詳細については「不倫の慰謝料の全容やポイントを6分で把握しよう」をご覧ください。
不倫された側の配偶者が、不倫配偶者及び不倫相手に対し、慰謝料を請求するには、主には次の3つの要件が必要です。
不倫配偶者に対しては、基本的に「肉体関係があった」事実があれば請求可能です。
これに対して、不倫相手に慰謝料請求する場合には、上記3つ全ての要件が揃う必要があります。
それでは、これら3つについて詳しく見てみましょう。
法律上の不貞(不倫)が認められるには、肉体関係があったことが必要です。
ただ単に、一緒に食事や映画などデートしただけの関係はもちろん、キス止まりの関係でも不貞にならないのです。
よって慰謝料請求をするには、二人の間に肉体関係があったという証拠を用意しなければなりません。
※不倫の証拠についての詳細は「その不倫の証拠は不貞行為を認めさすことができますか?」をご覧ください。
不倫相手に慰謝料を請求するには、肉体関係があったことに加えて「交際相手が既婚者である」と知っていたことも必要です。
もし不倫配偶者が、自分は独身だと偽って肉体関係を持った場合、不倫相手に対しては慰謝料を請求できません。
ただし、相手が既婚者だと知らないことに過失(落ち度)がある場合は、不倫相手は不法行為責任を負います。
たとえば、二人が同じ職場であった場合は、少し注意すれば相手が既婚者であると分かるので、過失があるといえます。
不倫で損害が発生するのは、不倫が原因により夫婦関係が破綻した為です。
もとは円満な夫婦だったのに、不倫によりその関係を壊されたから、損害が発生するのです。
最初から夫婦仲が悪く破綻状態だった場合は、不倫により夫婦関係が壊れたとは言えず、損害は発生していない為、慰謝料は請求できません。
先ほどお伝えした3つの条件に該当すれば、不法行為に当たる為、不倫配偶者または不倫相手に慰謝料を請求できます。
しかし不倫の慰謝料請求権は、借金や飲み屋のつけ等と同じく、請求可能な期間、つまり「時効」があります。
時効とは、一定期間を過ぎることで、請求できる権利が消滅してしまうことです。
時効が完成すれば、不倫配偶者及び不倫相手から慰謝料を払わせることが困難になります。
それでは、不倫の慰謝料請求の時効は、どれくらいの期間で完成するのかをお伝えしたいと思います。
不倫の慰謝料請求の時効は、次のいずれの期間の経過により完成すると法律で規定されています。
・不倫関係があったときから20年間(除斥期間)
ここで消滅時効について、次の例において、以下の様な疑問などが出る方も中にはいるでしょう。
3年以上前に、夫が会社の部下と不倫していることは分かっていた。
でもその時は、慰謝料請求をせずに、夫婦関係の修復を目指したが駄目だった。
夫に離婚と合わせて慰謝料を請求したい!・・・でも時効だから無理?
結論からお伝えすると「慰謝料請求はできる」
なぜなら次の様な条文があるからです。
民法第159条(夫婦間の権利の時効の停止)
夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
従って、離婚していないのなら、夫に対する不倫の慰謝料請求は原則として消滅時効にかかりません。
離婚協議中であれば、当然に請求することができます。
続いて、先ほどの例において、不倫相手に慰謝料請求は出来るか否かについてです。
夫の不倫相手は会社の部下なので、その相手に関する情報が掴めている為、慰謝料請求権は原則通り3年で消滅時効にかかります。
よって先ほどの例だと、妻は不倫相手に対して、慰謝料を請求する事は出来ません。
ただし、不倫相手の顔は見たことがあっても、氏名や住所が分からないなら、消滅時効のカウントは開始されません。
判例では、不倫相手に対する慰謝料請求の消滅時効は「現実の氏名及び住所を知ったとき時」から3年間とされているからです。
不倫相手の氏名や住所を知ってから3年経ったからといって、慰謝料請求は自動的に権利を失うわけではありません。
慰謝料請求権を消滅させる為には、不倫配偶者や不倫相手からの「時効の援用」が必要となります。
時効の援用とは「不倫相手や不倫配偶者が不倫された側に対し、時効が完成したので、慰謝料は払いません」と主張することです。
時効の援用をしない限り、慰謝料請求権は存続します。
除斥期間とは、ある権利に関して法律が定めた存続期間のことです。
権利を行使せずにその期間が過ぎると、その権利は法律上当然に消滅します。
不倫の慰謝料については「20年」という除斥期間が定められています。
ですので、21年前の不倫の慰謝料は請求できません。
除斥期間の狙いは、権利関係を速やかに確定させることにあります。
なお、随分前の不倫の慰謝料請求は、法律上請求可能かは別として、裁判では慰謝料額が低額になる傾向が強いです。
「時効期間がすぐ近づいている!このままでは慰謝料を請求出来なくなる!!」
このケースについて、どう対処すればいいかを最後にお伝えします。
対処法とは、時効期間が過ぎる前に「時効を止める」ことです。
時効を止める方法は以下の二通りあります。
裁判上で慰謝料請求をした場合、その時点で消滅時効期間はなくなり、時効のカウントは0へ戻ります。
つまり、最初から期間を数え直すことになるのです。
内容証明郵便などで慰謝料を請求すると、時効が一旦ストップします。
これを法律上では「催告」といいます。
催告をしたときより「6ヵ月間」は、時効の完成を食い止めることが可能なので、その間に解決を目指します。
加えて、その6ヵ月以内に裁判上の請求をすると、消滅時効期間はなくなり、時効のカウントは0へ戻ります。
なお、除斥期間においては、時効の中断・停止は行なえません。
今回は不倫慰謝料の時効について取り上げました。
時効が間近に近づいている方は、今すぐに時効の中断を行うようにしましょう。
また時効がまだまだ先であったとしても、慰謝料を請求すると決めたなら、いち早く請求することです。
なぜなら、時間が経てば経つほど事実関係が曖昧になりますし、お伝えした通り、慰謝料が低くなる傾向があるからです。
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私は夫の不倫がきっかけで離婚し、現在、離婚や男女トラブルを専門とする法務事務所に働きながら、息子と一緒に暮らしています。
私も不倫相手に慰謝料を請求した経験があり、その方にきっちりと責任を取ってもらいました。
とはいえ、慰謝料請求した当初は全然うまくいかず、相手の不誠実さに苛立ちが爆発するばかりでしたが、最終的にはケジメをつけることができ、前に進めるようになりました。
私の離婚に至ったいきさつや、不倫問題を解決させる迄の経緯、早期に問題に解決させる為のポイント等を私の自己紹介と共に、下のリンクの記事でお伝えしています。
不倫相手に対しての慰謝料請求を失敗して、散々たる思いや更なる精神的苦痛を負わない為に、必ず押さえておきたいポイントを取り上げています。
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